新しいことを始めるとなぜ不安になる?脳科学者に聞くプラス思考になるコツ
春といえば、新しいことにチャレンジしたくなる季節。しかし毎年、新たな目標をたてて仕事や自分磨きをしようと意気込んでは、いざとなると不安になって一歩踏み出せなくなってしまう...。なぜ、期待よりも不安ばかりが膨らんでしまうのか?その不安を感じる脳のメカニズムを理解し、プラス思考にする方法を身につけることで、今年こそ前向きに挑戦できるはず!そう考えたライターameriが、友人女子を連れて、脳科学者の枝川先生に相談してみました。自己効力感を高めることで、前向きにチャレンジできるようになるんだとか...。
胸の中に膨らむのは期待!じゃなく不安?
こんにちは、ライターのameriです。
女性向けメディアを中心にライターとして活動している私ですが、最近は、小説やエッセイなどといった新しいジャンルの執筆にもチャレンジしたいと考えています。
とはいえ、今ある仕事とのバランスや時間や収入のことを考えてしまったり、「私の書いた創作物に興味を持ってくれる人はいるのかな」なんてネガティブ思考になってしまったりして、なかなか新しい一歩を踏み出せずにいました。
そんな気持ちを周りの友人たちに話してみると…
「その気持ち、とってもわかる!!!」
「最初は期待に胸を膨らませるのに、気づけば不安だらけになってるよね…」
「それで、結局、チャレンジするのを諦めちゃってる…」
などの声が。
同い年のミホからは「昔からの夢にチャレンジしたい気持ちはあるけど、今の職場での安定した環境を捨てきれない」、年下のミクちゃんからは「就活で何を大切に進むべきかわからない!」という悩みも出てきました。
「今年こそ、不安やネガティブな気持ちを乗り越えて、殻を破りたいよね!」
「何事にも前向きに挑戦できたらいいのにね」
なんて話しながら、なんの打開策も見出せずに、その会はお開きになりました…。
(まぁ、女子会って、そういうもの!)
とはいえ、新しいことにチャレンジしたいんです!
後日、改めて「どうして一歩踏み出すときに躊躇してしまうのか」について、ひとりで考えてみました。
そもそも、どうしてチャレンジを前にすると不安ばかりがどんどん大きくなっていくのか?それを乗り越える思考法はあるのか?ネガティブ思考を払拭してプラス思考へと切り替えられる方法があるのなら知りたい!
そう考えた私は、友人女子たちを再集結し、脳科学の視点で「チャレンジ精神」や「モチベーション」について研究している枝川義邦先生にオンラインで相談してみることにしました。
感情や考え方を司る脳のメカニズムを知り、不安を感じる理由を解明することで、チャレンジしたい気持ちと前向きに向き合うことができると考えたわけです。
枝川 義邦(えだがわ よしくに)
脳科学者/早稲田大学理工学術院 教授
東京大学にて薬学の博士号、早稲田大学にてMBAを授与される。早稲田大学高等研究所准教授などを経て現職。人材・組織開発、マーケティングなどについて、脳の働きとビジネスとの接点を研究テーマとしている。テレビ出演や雑誌取材、講演なども多い。著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)など。2015年早稲田大学ティーチングアワード総長賞、2017年ユーキャン新語・流行語大賞を「睡眠負債」にて受賞。
人はチャレンジ好きな生き物!?
枝川先生、よろしくお願いします。今日は、新しいことにチャレンジしたい!“けど…”とか、自分の殻を破りたい!“でも…”とか、挑戦を前にすると「けど・でも」ばかりを考えてしまう私と同じ悩みを抱えている友達も連れてきました!
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
さっそくですが、4月になると新しいことを始めたくなる人が多いと思うのですが、そもそもヒトってチャレンジしたい生き物なんですか?
はい。ヒトって元来、挑戦したい生き物なんですよ。何か新しいことをしているときに「楽しい」って感じませんか?
確かに感じます。
それは、ドーパミンという物質の分泌が脳内で盛んになることが関係しているんです。楽しいと感じると、もう一度やりたくなるじゃないですか。ヒトの脳にはそういった仕組みがあり、本来は挑戦したい気持ちを持っているはずなのです。ですが、日本人は性質として割と不安を先に感じてしまいがちなんですよね。
日本人ならでは?それは、なぜなのでしょうか?
文化的な背景も影響しているのですが、遺伝子レベルである程度決まっているともいわれているんですよ。
遺伝子レベル…!
確かに、何かにチャレンジするとき、最初はワクワクが勝つんですが、いざ具体的に決断を迫られると不安な気持ちが大きくなっちゃう気がします…。
不安を感じるのは、セロトニンの分泌量が少ないから?
私から皆さんに質問してみてもいいですか?自分は、期待と不安のどちらが先行するタイプだと思います?
私は期待…かな。
私も期待が最初に来ますね。
私は不安を先に感じてしまいます。
おお、めずらしく「期待先行型」のほうが多い、前向きなコミュニティですね!
あれ…?意外とameriさんとミホさんって、ポジティブ寄り(笑)?
実は、日本人は「不安先行型」の人が多いと言われているんです。というのも、脳内には感情や気分をコントロールするセロトニンという神経伝達物質があって、日本人はセロトニンの情報が伝わりにくい遺伝子を持っているため、不安を先に感じてしまう人が多いと言われているんですよね。
ちなみに、居心地のいい空間をつくることで、セロトニン神経に働きかけて、不安を抑えることもできるんですよ。
(居心地のいい空間かぁ。自宅の作業環境を見直してみようかな。)
<居心地のいい部屋を作るおすすめの方法>
あの先生…、私は「不安先行型」なのですが、この考え方はあまりよくないんですかね?
不安って、別に悪いものではないんですよ。
えっ、そうなんですか…?
不安を感じるのは、高等生物である人間ならでは。そして、ある程度年齢を重ねなければ、不安な気持ちにはならないじゃないですか。将来のことを予想できるからこそ、はじめて不安を感じるものなんです。
なるほど。
それに、不安な気持ちがあるからこそ、ちゃんと情報収集をしてリスクヘッジしよう!とも思えるんです。とはいえ、不安が大きすぎるとチャレンジ精神にブレーキをかけてしまうので、上手に付き合うことが大切ですね。
最大の不安要素は、生活(お金)の問題?
以前、私たちで集まって話をした時に、チャレンジ精神にブレーキをかけてしまう要素として、生活…つまりお金の問題が大きな要素だという話題になりました。
そうなんですね。確かにお金は不安につながりやすい要素になりますよね。
私は就活生なのですが、やりたいことを優先した仕事に就いた方がいいのか、お給料のこともちゃんと考えた方がいいのかで悩んでいて…。
私も就活をした時、同じ悩みを持ってたよ。
やりたいことと生活とを天秤にかけて、お金の面が不安だからチャレンジを諦めるという人って多いと思うんです。お金ってやっぱり大きな不安要素になるんですかね?
そうですね。ですが、実はお金自体に魅力を感じているっていう人はあまりいなくて。言い方は悪いですが、お金=紙に数字が書いてある引き換え券とも言えるじゃないですか。お金をたくさん持っていること自体ではなく、それを使って引き換えられる先のものに価値を感じているんですよね。
確かに。
何でも交換できる券だからこそ、威力が大きくて不安につながりやすいというのはいえると思います。けど、自分は引き換えた後の何に価値を感じているのか?それが本当に自分にとって価値があるものなのか?を踏まえて、新しいことにチャレンジするかどうかを判断してみるといいですよ。
なるほど!お金を一度、引き換え券として捉えてみると、自分が本当に大切にしたい価値も見えてきそうですね。
成功体験と人生経験を積むために、日々チャレンジを!
それにミクさんの場合、就活に対して不安を感じているのは、就職した後の生活が想像できないからではないですか?
そうかもしれません。まだ経験したことがないからこそ、不安を感じているように思います。
これは就職のことだけではなく、あらゆるところでもそう。知らないことが不安な気持ちにつながっています。
そういう未知の環境にどんどん飛び込んでいける人って、すごい尊敬します。なんで、そんなに行動力があるのかなって不思議なんですが…
行動力のある人の特徴として、いろんな成功体験を過去に積んでいることが挙げられます。
仕事やアルバイトに限らず、部活、サークル、勉強のことなど、どんなことでもいいのですが、成功体験を積み上げることで他のことでも「できる感」が芽生えてくるんです。実際に、学生生活で成功体験を積んでいる人の方が、就職後のパフォーマンスも高いと言われています。
なるほど。成功体験を積むためにも、日々チャレンジをしてた方がいいってことですかね?
そうですね。いろんな挑戦をすることで、成功体験だけでなく人生経験も豊かになります。そうやって成功させるための引き出し(手段)を増やすことで、より不安を感じにくい状態で新しいことにチャレンジできるようになります。
ちなみになんですが、「何かにチャレンジしたい!」と思ったときは、目標は高く設定した方がいいんですか?
ある実験で、一番やる気が高まるのは成功確率が50%である、という結果が出ているんです。どういうことかと言うと、成功確率50%のときにやる気はマックスになって、それより確率が高くなっても低くなってもやる気の神経回路の活動は下がってしまう、ということなのです。もし、脳の中でやる気を最も高くコントロールしたいなら、最初は成功確率50%くらいのハードルに設定するといいですよ。
脱ネガティブ!チャレンジを成功に導くプラス思考と自己効力感
成功体験や人生経験がまだ少ない人が、新しい一歩を踏み出すための思考法などは、ないんでしょうか?私は何事もネガティブに捉えてしまいがちなのですが…。
どんなネガティブな人も、絶対にポジティブな気持ちも持っています。そのことに気づくことが第一歩です。
といっても先生、なかなかポジティブになれないのが現実で…。例えば、自分の見た目や部屋などの環境を変えることで、プラス思考になれたりするのでしょうか?
そうですね。見た目や室内の印象を明るくすることで、プラス思考に近づくことはできます。
<室内の印象を明るくするおすすめの方法>
なるほど。他におすすめの方法はありますか?
どんな些細なことでもいいので、ポジティブ日記を書いてみるのがおすすめです!そうすることで、自然と脳がポジティブな情報にフォーカスされていきますよ。
日々のポジティブな出来事ばかりを綴ることで、脳をプラス思考に変えられってことですか?
はい。さらにポジティブ日記を書くことで、きっといろんな成功体験を積んでいることにも気付けるはずです。そうすれば「自己効力感」も高まっていきます。
自己効力感…?
自己効力感とは、目の前に越えなければいけない壁やハードルが現れたときに、自分がその壁やハードルを越えられると思える感覚のことです。周りが「いやいや、君はこの壁を越えられないでしょう」と言おうとも、「私は越えられる」と思っているのであれば、自己効力感は高いといえます。先ほどの「できる感」の正体です!
自己肯定感とは違うんですか?
混同されがちですが違います。自己肯定感は、成功しても失敗してもありのままの自分を受け止めること。対して自己効力感は、自分がしっかり結果を出せると思っていることを指しています。
チャレンジが「恋」をしている感覚に近くなる!?
自己効力感を高めることで、挑戦することに前向きになれるんですね。
はい。対して、自己効力感が低い方は高い壁をストレスに感じてしまいがちです。そういう時には、身体が悲鳴をあげてしまう…なんてことも起こりえるのです。
えっ…!身体に影響が!?
挑戦をいい機会だと思えている方は、同じチャレンジしている状況なのに「恋」をしている時と同じような高揚感を感じていると言われていて(笑)。
そうなんですね!恐怖のドキドキを恋のドキドキと勘違いする「吊り橋効果」みたい。「チャレンジ=ワクワクできること、ドキドキできること」として、プラスに捉えているんですね。
それに自己効力感が高くなると、高い目標にも積極的にチャレンジできるようになるんです。少し話が変わるのですが、みなさんは「必ず成功させる方法」って何かわかりますか?
「成功するまで続けること」と聞いたことがあります。
そうなんです!ただ挑戦するのでなく、挑戦し“続ける”ことが大切なんです。自己効力感が高い人は心が折れにくい傾向があるので、チャレンジを繰り返して成功へと導けるはずです。そしてうまく行かないことがあっても「成功までのプロセスだった」とポジティブに言い切れる心意気があれば、困難な壁も乗り越えられると思いますよ。
なるほど!その始まりが、ポジティブ日記ということですね。
はい。
チャレンジし“続ける”ためのモチベーションの作り方
私はライターとして、これまでやりたいことに比較的チャレンジしてきた方だと思うんですけど、どうしてもモチベーションにムラがあって…。何かいい改善策はないでしょうか?
まず最初に、モチベーションが低くてもチャレンジし続けられるような状態を作ることが大切です。具体的には、やる気がなくても朝ベッドから起きてパソコンに向かうようにする。つまり「習慣化」ですね。
なるほど。
習慣にすると、一大決心をしなくてもできるようになります。生活の中でつまずきやすい部分をピックアップして、そこを毎日乗り越えなくてもいいように仕組み化すると、モチベーションが低いときでもスムーズに取り組めるはずです。
ストレスに感じている部分を習慣化して乗り越えるというわけですね。
あとは、あえて全て終わらせず、翌朝に仕上げのみ行うようにタスクを残しておくことでモチベーションを維持できます。
というのは…?
例えばameriさんの場合だと、納品する記事を完璧に仕上げておくのではなく、最後のひと手間だけ残しておいた状態で仕事を終えるということです。翌日、推敲・メール送信などの軽いタスクからスタートできるので、ストレスを感じずに始められ、それを終えたあと次の仕事にも取り組みやすくなるんです。
なるほど!低いハードルから始められるようにスケジューリングしておくのがいいんですね。今日からやってみます!本日はありがとうございました。
ありがとうございました!
<モチベーション(やる気)をアップさせるには、こんな方法も>
チャレンジを楽しむために、まずはできることから始めよう!
今回の取材を通じて、改めて「チャレンジすることは楽しいことなんだ」と気づくことができました。そして、チャレンジを阻む「不安な気持ち」を少なくするには、いろんな成功体験を積むことや自己効力感をアップすることが大切だということも教えてもらいました。
何か新しいことに挑戦したい!と思っている皆さんも、ぜひ今回の先生のお話を参考に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。見た目や部屋の環境を変えることでプラス思考に近づけるとのことですので、まずはできることから始めてみましょう!
<プラス思考への第一歩!見た目や部屋の環境を変えるヒント>
という私は、取材後に早速、自分が重視したい価値は一体何なのか?を改めて書き出して、50%の目標設定をしてみました。さらに、挑戦することを「楽しもう!」と思えるようになったことで、以前よりもネガティブ思考になりにくくなったように感じています!
先生から教えてもらったアドバイスを参考に、今年こそ、新たなチャレンジを成功させてみせます!!!
・当記事に掲載の情報は、執筆者の個人的見解で、ライオン株式会社の見解を示すものではありません。
この記事を書いた人
ameri
2016年より執筆をはじめ、主にエンタメ・ライフスタイルについて書いています。映画と美容、コーヒーとチョコレートをこよなく愛するフリーライター。百貨店のコスメフロアと映画館によく出没しています。
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下記のコメントを削除します。
よろしいですか?
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